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テレビ朝日系列 テレビ朝日 ローカルセールス なにわ男子の逆転男子 スポンサー情報 まだアプデしてないの? 2021年4月~21年6月
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田渕(たぶち) 茶髪の細目、ボサボサした短髪の小柄なスケベ少年。 女子にエッチな妄想を抱いている。 千葉をエロ師匠と慕い、学校内で千葉と一緒に行動をしている。 自分が「千葉の太鼓持ち」である事を自覚している。 犬口(いぬぐち) 角刈りの髪型に目が点、左のほっぺたに×字の絆創膏をつけている少年。 なんでもバスケットでみつばに椅子代わりに使われた事に喜びを感じていた。 犬のように走る等、常に犬みたいな振る舞いをしている。 原作では第1話など僅かに登場するのみだが、アニメ版ではモブの男子の中で最も多く登場するが、台詞はほとんどない。 三好(みよし) 黒髪のイガイガ頭で三角形の眉毛が特徴。アニメ版だと千葉と行動を共にする事が多い。 岡部(おかべ) 短髪のイガイガ頭で細目のぽっちゃりとした少年。TKGと書かれたTシャツを着ている。運動は苦手。 本庄(ほんじょう) 眼鏡をかけた、口数の少ない少年。運動神経の鈍い者同士の吉岡が企画した合コンによって、岡部とすっかり仲良くなった。 尾久(おぐ) 短髪で長身の少年。 深谷(ふかや) 丸坊主にした少年。 行田(ぎょうだ) 少なめの黒髪にボサボサした細目の少年。 赤羽(あかばね) 目の小さな黒髪の少年。 大宮(おおみや) 独特の髪型をした茶髪の少年。 倉野(くらの) ドングリのような頭で黒髪の少年。 桶川(おけがわ) 眼鏡をかけた茶髪で糸目な少年。 北本(きたもと) 眉の太い黒髪の少年。主に初期の頃に登場している。 吹上(ふきあげ) 黒髪で髪が左右に突き出ている少年。「H」と描かれたTシャツを着ている。 上野(うえの) 黒髪の長身な少年。 高崎(たかさき) 茶髪で糸目な少年。
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(♂)扭曲法則的無聊男子 姓名 / 暱稱:無聊男子 種族:半精靈體人類 角色特點:臉外顯得相當老,性格扭曲,且不擇手段的冷血。 相關故事:角色資料:無聊男子、角色資料:無聊男子 - Code Ruin、
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白鳳中学 守備をガチガチに固めるチーム。 繋いで戦うチームにとってはかなりきついが投手力は高くはないので一発攻勢のチームならある程度余裕を持って戦える。 3番キャッチャー久保はリード面で投手陣を引っ張るのだが…。 1 2 久保 右/右・捕・4・F5・A166・E6・B12・B12・C10・対左打者4、走塁4、キャッチャー○ 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18
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トップページ セナ☆のワンフリR日和♪ - 過去ログ 水着のお話 はじめましてのお話 ←前 セナ☆のワンフリR日和♪ - 過去ログ 次→ 海系女子のお話 水着のお話 2014/7/25(金) 午後 10 21 こんばんは、セナですよ☆ 今日は新装備「水着」の解禁日♪ みんな手に入れたー? まだの人は岬の教会に行きましょう☆ グラボスコインとレシピを交換できるヨ レシピ1つにコイン3枚 レシピは全部で8種類だからコイン24枚必要 片方のデザインだけでいいなら12枚でOK! 異性の分も揃えるなら(?)48枚必要 ない人はとっととグラボスシバキに行きましょう☆ さっそく着てみたー いやー、アバターとはいえ恥ずかしいなぁ(///∇///) これはサマートップとサマーパレオ あとパッショントップとパッションタンガというのがあるヨ ステは共通 直撃2 精神2 命中2 速撃2 耐久9 素早さ6 セット効果 直撃 精神 命中 速撃 +2 さらにこれらを使って強化生産するとEXになるみたい EX共通 直撃15 精神15 命中15 速撃15 耐久42 素早さ25 セット効果 直撃 精神 命中 速撃 +6 EXを生産するために必要なアイテム 全共通:海系女子の涙×3 サマートップ:クイーンスノー サマーパレオ:クイーントラウザ パッショントップ:舞姫のドレス パッションタンガ:舞姫の髪飾り う~むSレア・・・ 海系女子の涙もどれぐらい手に入るのか気になるトコロ 水着のいいとこは2つだけでセット効果が付くこと♪ あとは好きなものつけてOK♪ 見た目的に制約あるケドね( ´∀`) ・・・そう言えば女子用の情報しかなかったよね!Σ( ̄□ ̄;) まぁたぶん似たようなもんかとー☆ ▲上へ はじめましてのお話 ←前 セナ☆のワンフリR日和♪ - 過去ログ 次→ 海系女子のお話 トップページ セナ☆のワンフリR日和♪ - 過去ログ 水着のお話
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「ふぅ。うまかった。さすがは菜水オススメのランチだ。さ~て、昼寝でもしようかな?」 「ねぇ。さっき言ってた電撃の回避の件だけど、よく考えたら周囲一帯に電撃を放てばあなたに避ける術は無いんじゃないの?」 「・・・・・・」 「やっぱり・・・!!」 「ま、まぁいいじゃん。もう終わったことだし」 「よくないわよ!!」 ここは、先程まで戦闘を繰り広げていた庭の一角。気持ちいい風も吹き、木陰揺らめくその下で、界刺は横になっていた。今から昼寝タイムへ突入する腹積もりなのだ。 「あのさぁ、苧環。俺は今から昼寝タイムなの。いい加減ゆったりとした気持ちで過ごしたいの。君もそう思うだろ、嬌看?」 「ビクッ!そ、そうですね・・・」 現在界刺の隣に居るのは、界刺の嘘に騙された苧環と界刺の傍に居たいがために付いて来た鬼ヶ原の2人。他の女性陣は、界刺が無理矢理追っ払った。 「折角バカ形製達を追っ払ったんだからさ、もう少し静かにしてくんない?そうだ、君も昼寝するといい。きっと、気持ちいいぜ?」 という具合に会話した結果、鬼ヶ原、界刺、苧環という“川”の形で寝転がることになった。 「ふぅ。風が気持ちいい・・・。成瀬台に通ってる時は、屋上とかでよく昼寝してんな~。ここは、そこに負けず劣らずって感じかな」 「確かに・・・気持ちいいですね」 「・・・そうね」 日差しは尚も周囲に強く照り付けるが、昼食中に寮の職員が水でも撒いたのか比較的涼やかに過ごせるようになっていた。 「・・・ねぇ」 「ん?」 「・・・あなたには、一厘に“あの”能力が備わっていることがわかっていたのよね?」 「・・・あくまで予想でしか無かったけどね。制限とかがある場合は、逆にそれを逆手に取れる可能性があるから。そこら辺を考えていたら、ぱっと思い付いたな。 まぁ、あれほど精密に識別できるとは思わなかったけど。さすがは、リンリンってトコかな?」 「・・・あなたらしい」 苧環は、言葉以上に感嘆していた。一厘が見出した、『物質操作』の制限を利用した物体感知術。 この男は、それをいとも簡単に思い付いた。だからこそ、その可能性を一厘に気付かせ掴み取らせるために、自分に対して電磁波による物体感知を禁止させたのだ。 「もしかして・・・一厘の目の前で私の物体感知方法を禁止することを話したのも、一厘にそちらの方へ意識を振り向かせるため?」 「まぁ、その前から散々不可視状態でリンリンと珊瑚ちゃんを苦しめていたんだけどね。そうすれば、俺の居場所を知る方法がないかって嫌でも考えるだろうし。 それでも中々“あの”可能性に気付かないから、君の参戦を機に言葉に出しただけ。 もっとも、君に電磁波による物体感知をしてもらっちゃあ困るから、結局は言っていただろうけど」 「・・・界刺様って、すごいんですね。色んなことを考えて、それを実行しちゃうんですから」 「それは違うよ、嬌看?これは、すごいことじゃない。当たり前のことなんだ。自分の能力を把握した上で、自分が伸ばしたい方向へ向けて訓練する。 授業とかでも習うでしょ?それができないってのは、そいつが根本的にバカなだけ。もちろん、君の『発情促進』だって例外じゃ無い」 「えっ!?」 界刺の言葉に、鬼ヶ原は思わず振り向くが碧髪の男は目を瞑ったままだ。 「君の『発情促進』だって、本当はもっと有効的な活用方法があるかもしれない。 君のことは珊瑚ちゃんに聞いたけど、その様子だと『発情促進』は滅多に使わないんじゃ無い?」 「・・・はい。『発情促進』は異性・同姓問わず発情してしまうので。殆ど使ったことは無いです」 『発情促進』を行使すれば、異性・同姓問わず自分に発情してしまう。 それ故に、鬼ヶ原は能力行使を控えるようになり、ほぼ制御できる今でも滅多なことでは使うことは無い。 「そんなんだと、何時まで経っても弱点は克服できないぜ?それとも、君は『発情促進』の弱点を克服したくないの?」 「し、したいです!!で、でも・・・」 「・・・だったらさ、頑張んなきゃ。自分の能力に自信を持つためにも。自分自身に自信を持つためにも。 君含めて、俺が最近会った女連中はどいつもこいつも『私には自信が無い』とか『私はいらない人間だ』とか『私は○○失格だ』とかばっか叫んでる。 俺からしたら、どいつもこいつもぶん殴ってやろうかと思うくらいムカつく連中ばかりだ」 「「!!」」 心当たりがある鬼ヶ原と苧環は、ピクっと反応する。 「何でそんなに自信が持てないかね?ホント“自分”が可哀想だぜ?『まだ力はあるぜ』とか『もっと頑張れるぞ』とか“自分自身”が言ってるかもしれないのに。 自分のバカっぷりのせいで、碌に“自分自身”を見ようとしない、聴こうとしない、そもそも気付きもしない・・・アホか? そんなに自分のマヌケっぷりを披露したけりゃ余所でやれ。1人でやれ。そいつ等は他人に頼る前に、まず“自分自身”に頼れよって話だ」 界刺の厳しい言葉が、涼やかな空気を冷たいものに変貌させる。 「本当にやること全部やって、それでも八方塞がりならその時は他人を頼ればいい。 まぁ、現実ではそれを貫き通すことは無理かもしれないし、俺だって気軽に人を頼ることは幾らでもあるけど、 それでもここ一番って時に信じようとするのは“自分自身”だ。自分を、“自分自身”を信じてくれる他人だ。 それを有耶無耶にするってんなら・・・そいつは救いようが無ぇ大馬鹿野郎だ。 今回のリンリンと珊瑚ちゃんの場合は、彼女達自身が何とか踏み止まったから、俺も手助けしたけどね。だから、嬌看。君は、ここが踏ん張り所なんだよ?」 「ここが・・・!!」 「そう」 鬼ヶ原は、界刺の言葉をゆっくりと咀嚼する。その意味を、1つたりとも零さないために。ここが、自分の分水嶺が故に。 「例えばさ、君の友達とかに頼んで『発情促進』の相手役になってもらうってのはどう?」 「えぇ!?そ、それは・・・」 「今の俺は、君の『発情促進』が効かないから意味ないし」 「でも・・・」 「うん?もしかして・・・友達とか居ないの?」 「・・・はい。金束先輩や、真珠院さんとは少しくらいはお話するんですが、友達とまでは・・・。 一応私も派閥には入っているんですけど、能力のせいか余り親しくは・・・。私もこんな性格なので・・・。 慕っている先輩も居るには居るんですけど、あの方を実験台にするわけにはいきませんし・・・」 「・・・苧環。派閥の長である君に聞きたいんだけど、派閥間の対立とかってあんの?」 「・・・対立とまでは行かないけど、閉鎖的な傾向はあるわね。それぞれ興味を持った分野が切欠で派閥を形成することもあるし、友達感覚な派閥もある。 千差万別という言葉通りね。だから・・・確かにあなたの言う対立も有り得るかもしれない。下級生を自分の派閥に入れるために、あの手この手を使ったりとか」 「派閥に所属する人数や能力者のレベルを自慢したりして、それに他の派閥が反発するとか?」 「それも有り得る」 派閥の長たる者として、苧環は自身の経験を元に言葉を発する。界刺も、自身の考えを述べる。 派閥に関して少しだけ議論した後に、誰もが静かになる。場に沈黙が訪れる。 「・・・・・・」 「・・・何を考えているの?」 「・・・大したことじゃ無いよ」 「・・・嘘、ね」 未だ目を瞑ったままの界刺に、苧環が体を、顔を寄せて行く。 「形製も言っていたけど、あなたは本当に嘘を付くのがうまいわね。自分の本心を悟らせない。『光学装飾』で、自分を偽るように」 『光学装飾』。この能力は、界刺得世という男にふさわしい能力だと苧環は思う。 光で装飾し、言葉で惑わし、ありとあらゆるものを騙す彼を象徴しているかのような能力。 「さっき言ってた私達女性への文句や愚痴も、本心であって本心では無い。だって、あれだけが本心なら、あなたはとっくに私達を見限っている筈。違う?」 「・・・さぁね」 「・・・きっとだけど、あなたが女性不信になってでも見限らなかったから救われた女性は沢山居る筈よ? 少なくとも、私はそう。私は、あなたに救われた。私は・・・あなたに感謝している」 苧環は、自身の本音を語る。この男が自分を含めた女性に苦しめられた事実に心を痛めながら。 「だから・・・ごめんなさい。あなたが苦しんでいることに、これっぽっちも気付けなかった。私は・・・あなたの言う通り大馬鹿野郎よ」 「・・・いいよ。もう終わったことだし」 「・・・それも、嘘。あなたってつくづく厄介ね。本当に大事なことは、絶対に誰にも明かさないんだもの。 形製が『分身人形』を仕掛けようと躍起になるのがわかる気がするわ」 「だったら、俺と関わらなければいい。そうすれば、君等が不快になること・・・ムグッ!?」 「・・・あなたの言葉なんて信じない。だって、どれが本当でどれが嘘なのかわかんないんだもの」 界刺の口を塞いだのは、苧環の人差し指。何時の間にか彼女は身を起こし、界刺の頭の横に正座していた。 「ハッ!!」 「!?」 掛け声と共に、苧環が界刺の頭を掴んで自分の膝の上に置く。 「お、おい!?」 「あなたは、ここに昼寝をしに来たんでしょ?でも、この芝生・・・何だか寝心地が悪いわ。私の感想だけど」 「まさか・・・!!」 「あなたが私達のせいで女性不信になっているというのなら、それを治すのも私達がやらないと。 私も、あなたのそんな状態なんて望んでいないわ。この私が女として扱われない?・・・屈辱だわ」 苧環の目が妖しく光る。つまり、苧環は界刺を膝枕すると言うのだ。そして、自分の膝の上で昼寝をしろと言っているのだ。 「い、いや、何かこっから更に酷い展開になりそうだから遠慮しとく!!経験上!!」 「駄目よ。それに・・・そんな経験なんてこの苧環華憐が塗り替えてあげる」 「(な、何か恐ろしい意味にしか解釈できないんだけど!!)」 界刺は何とかして苧環の膝枕から脱しようとするが、苧環が無理矢理抑え付ける。 「それに、こういうのは私から始めたんじゃ無いから。全ては、鬼ヶ原の“間接キス”から始まったんだから」 「!!」 「か、“間接キス”!!?ハッ!!ま、まさかあのミネラルウオーターは・・・!!?」 界刺は冷や汗ダラダラ状態で、鬼ヶ原へ視線を向ける。頼むから否定してくれ!!そんな男の願い虚しく・・・ 「・・・私の初めてですからね、界刺様?」 「Noォォォォォォッッッ!!!!!」 「さぁて。それじゃあ、私も遠慮無く行かせてもらおうかしら」 「あ、あの!!わ、私も・・・」 「へっ!?」 「へぇ・・・。クスッ。いいわよ、あなたも来なさい。早くこの男の女性不信を治療してあげないと」 「ど、どういう意味・・・!!?」 視線を横に向けると、そこには鬼ヶ原が正座している姿があった。その膝の先が、苧環の膝と膝の間に入って行く。これは・・・ 「よかったわね、界刺?常盤台が誇る美少女2人による“W膝枕”だなんて、普通の男子高校生には体験できない代物よ?」 「か、界刺様・・・。ど、どうぞ・・・!」 「(『どうぞ』っつったって!!俺は今女性不信状態なんだっつーの!!女性的なことを意識しちまうと・・・Noォォォォォッッッ!!!)」 美少女2人の膝の感触が、界刺の触覚を襲う。それに次いで、少女達から香る匂いが界刺の鼻腔をくすぐる。これは、ヤバイ。“女”をどうしても意識してしまう。 界刺の頬が僅かに朱に染まり始めたのを目に映した苧環と鬼ヶ原は、瞬間的に自分達の大胆な行動を改めて捉え直す。 その途端に2人共に羞恥心が頭をもたげたのだが、界刺の女性不信症を治す絶好の機会を逃すわけにはいかない等々、様々な理屈を付けて自分自身を無理矢理納得させる。 「こ、ここ、こういうのは、あ、ああ、案外ショック療法がい、いい、一番こ、ここ、効果的だったりす、すす、するのよね!! つ、つつ、つまり、か、かか、界刺をお、おお、おおお・・・・・・・・・“女”へ発情させればいいのよ!!!ハァ・・・ハァ・・・!! け、けけ、結構は、はは、恥ずかしいけど、か、かか、界刺のた、たた、ためなら・・・!! あ、ああ、あの“行為”をし、しし、しようとしたら、で、でで、電撃でこ、ここ、行動不能にす、すす、すればいいんだし!!」 「そ、そそ、そうですね!わ、わわ、私もか、かか、界刺様と出会ったショックで、す、すす、少しは男性不信がか、かか、解消され始めているみたいですし!! か、かか、界刺様のためなら・・・わ、わわ、私もしゅ、しゅしゅ、羞恥なんかき、きき、気にしてい、いい、いられません!!」 「(し、知るかー!!それはそれ。これはこれだっつーの!!お、お前等に俺が発情してどうすんだー!? こいつ等、後先全然考えて無ぇ!!くっ、何とかここから・・・ムグッ!?)」 「ほ、ほほ、本当にお、おお、往生際がわ、わわ、悪いわね?か、かか、観念なさい? そ、そそ、そうね・・・。こ、ここ、これだけじゃ、い、いい、今のか、かか、界刺にはふ、ふふ、不十分かも・・・。 こ、ここ、こうなったらお、おお、思い切って・・・(ゴソゴソ)・・・え、ええ、えええぇぇいっ!!!」 「(なっ!?)」 界刺の顔面左から押し付けられたのは・・・苧環の慎ましい胸。 (ブラウスのボタンを外して、多少はだけた状態にしている)。 「スゥ~。ハァ~。スゥ~。ハァ~。・・・私もやってみようかな。・・・(ゴソゴソ…ブチッ!ブチッ!)・・・あっ!・・・し、仕方無いか・・・。んしょっ!!」 「(な、何ぃー!?)」 界刺の顔面右から押し付けられたのは・・・鬼ヶ原の爆発しそうな胸。 (ブラウスのボタンを外して多少はだけた状態にする筈が、途中でボタンが吹っ飛んだため普通にはだけている) 「・・・何だか嫉妬しちゃうわね、その胸」 「・・・でも、重いですよ?肩がこっちゃいますし・・・」 「・・・勝者の余裕を感じるわね」 「そ、そんなつもりは・・・」 「(というか、お前等どけ!!息がしにくい!!ってか、こいつ等の汗が俺に落ちて来る!!そもそも、クソ暑ぃー!!こんなんで、昼寝ができるかよ!!!)」 周囲を覆う暑さと男性へ己が胸や膝を押し付けている羞恥心からか、苧環と鬼ヶ原の顔は真紅に染まっていた。とはいえ、先程よりかは冷静である。 一度行動さえしてしまえばというヤツなのか。やはり、女は度胸なのか。 「ハァ・・・ハァ・・・。ンハアァッ・・・ハァ・・・ハァ・・・」 「ハァ・・・ハァ・・・。ングッ・・・ハァ・・・ハァ・・・」 「(ちょ、ちょっと待て!!お、俺を発情させるんじゃなかったのかよ!?お前等が発情してどうすんだ!!?言ってることとやってることが全然違ぇー!!!)」 2人の顔から界刺へ向かって、幾粒もの汗が零れ落ちる。興奮しているためか荒くなっている吐息が、界刺の瞼や耳に何度も掛かる。 また、2人揃って前屈みになっているせいか、界刺の視線上には2人の胸の谷間がくっきりと見えてしまっている。その頂点にある“モノ”も、僅かながら瞳に映る。 加えて、そこから漂ってくる甘い“女”の香りが否応無しに鼻腔を刺激する。口だけで息をしようにも、苧環が左手で塞いでいるためそれも叶わない。 更に、苧環の右手が界刺の左耳や碧髪を妖しく愛撫し、鬼ヶ原の右手が界刺の首や胸板を、左手が界刺の右耳やうなじを優しく愛撫している。 正に、(界刺にとっての)地獄である。 「ハァ・・・ハァ・・・。ングッ・・・これで、界刺の女嫌いが少しはマシになるといいんだけど・・・。今度は・・・耳朶でも口に含んでみようかしら?はむっ!」 「ハァ・・・ハァ・・・。ゴクッ・・・きっと、いけますよ。こんな私でさえ、界刺様のおかげで少しずつ良くなっているみたいですから。 何事も訓練あるのみ・・・です!それじゃあ私も・・・。はむっ!」 「(Noォォォォォッッッ!!Noォォォォォッッッ!!!)」 少女達は知らない。例えそれが迷惑では無く純粋な善意からの行動であったとしても、本人の了解が無ければ何の意味も無いこともあるのだ。 それから1時間もの間、界刺はこの“女”地獄を味わい続けた。もちろん、昼寝はできなかった。『ウソツキには罰が当たる』とは、まさしく至言である。 continue!!
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- 2010年8月7日:インディ「えびぞりダイアモンド!!」私立恵比寿中学 2011年1月10日:インディ「チャイム!」私立恵比寿中学 2011年1月10日:インディ「どしゃぶりリグレット」私立恵比寿中学 2011年4月27日」インディ「ザ・ティッシュ〜とまらない青春〜ト」私立恵比寿中学 2011年7月27日:インディ「オーマイゴースト?〜わたしが悪霊になっても〜」私立恵比寿中学 2011年10月5日 インディ「もっと走れっ!!」私立恵比寿中学 メジャー 2012年5月5日:「仮契約のシンデレラ」私立恵比寿中学 2012年8月29日「Go! Go! Here We Go! ロック・リー」私立恵比寿中学 2012年8月29日「大人はわかってくれない」私立恵比寿中学 2013年1月16日「梅」私立恵比寿中学 2013年6月5日「手をつなごう」私立恵比寿中学 2013年6月5日「禁断のカルマ」私立恵比寿中学 2013年11月20日「未確認中学生X」私立恵比寿中学 2014年6月4日「バタフライエフェクト」私立恵比寿中学 2014年11月5日「ハイタテキ!」私立恵比寿中学 *
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上空には少しずつ雲が出てきている。吹く風も、午前中に比べれば強くなり始めている。まるで、風雲が急を告げているかのように。 「相変わらず、バカ界刺の思考は読み辛いったらありゃしない。まさか、派閥の在り方に目を付けていたなんてね。 確かに、あいつの性格的には気に入らない部分だろうけど」 「あら、私は気付いていたわよ?彼が何をしようとしているのかを。『分身人形』に頼り過ぎじゃない、形製? それにしても・・・一度決断すればこの名門常盤台の在り方さえ躊躇無く敵に回すか・・・。クスッ、さすがは界刺さんって言った所かしら?」 「界刺・・・“さん”?」 「苧環・・・。君は・・・本当に界刺のことを・・・!!」 「ハッ!!」 「・・・これも、さすがは界刺さんって言った所かな?・・・ホント界刺さんって、今日1日だけでどれだけのことを為そうとしているんだろう・・・?」 そんな中、ここ常盤台学生寮の庭に立つのは男1名と女2名。 男の名は界刺得世。女の名はフィーサ=ティベル。そしてマーガレット=ワトソン。少女達は『光学装飾』対策のためか、サングラス装備であった。 「得世様が勝つに決まっています!!」 「い、いえ!!遠藤は、フィーサ様達が勝つと思います!!」 「サ、サニー先輩はどちらが勝つと思いますか?」 「う~ん・・・む~ん・・・う~む・・・・・・よくわかんないです!!!」 「「「えっ」」」 これより、午後の“講習”が開かれようとしていた。その噂は瞬く間に学生寮中に広まり、寮内の常盤台生達はまたもや庭の一角にて見学する形になった。 「つ、津久井浜さん。また、あの人が面白そうなことを・・・」 「・・・静かにして下さいませんか、菜水さん?私は今・・・とても集中しているの」 「(こ、こんな真剣な津久井浜さんは初めて見る・・・!!やっぱり、あの人に負けたのが相当悔しいのかな?)」 午後の“講習”はもうすぐ始まる。場に緊迫した空気が漂い始める。午前の“講習”にて既に常盤台生を4人も打ち破っている男、界刺。 その男と対峙するのは、常盤台に存在する派閥の中でも規模が大きい部類に入る派閥の長、フィーサその人。そして、フィーサの片腕的存在であるマーガレット。 彼女達との戦闘が終わった後は、“常盤台バカルテット”との対決も控えている。見学する少女達は、人知れず手に汗を握る。 「フィーサ様・・・!!必ずや勝利の栄冠を私達の手に・・・!!」 「あ、あんな何処にでも居る男子校の学生1人に、私達常盤台生が負け続けるなんてことは絶対に許されないわ!!」 「フィーサの奴は気に入らないけど・・・そんなことは言っていられない。私達が常盤台(ここ)に居る意味を無意味にしないためにも!!」 界刺にとって名も知らぬ少女達が口々に言い合うそれは、焦燥と言う名の感情。 もし、今回の“講習”に参加している彼女達でさえ打ち破られるような事態になれば、単身であの男に立ち向かえる常盤台生は2人しか居なくなる・・・かもしれない。 2人とは、常盤台に存在するレベル5。学園都市第三位の御坂美琴。学園都市第五位の食蜂操祈。 最高峰の電気系能力者と最高峰の精神系能力者。常盤台の秘蔵っ子である彼女達なら、あの男を打ち破ることは造作も無いだろう。 だが、それだけだ。この2人以外なら、常盤台生は男子校の生徒1人に勝つことさえできない・・・かもしれない。 それは・・・名門常盤台中学に通う者として、果たして認めてしまっていいものなのか。答えは・・・否。 もし認めてしまったら、学園都市でも5本指に入る名門校に所属する自分達の存在意義が揺るがされる。 『常盤台に通うレベル5以外の学生は、たかが一般の男子高校生1人にさえ及ばない』等と言う事実は、絶対にあってはならないのだ。 「どうやら、観客のテンションも上がって来たようだ。いいね、この感じ」 「彼女達のテンションは、貴方が思っているようなものとは違うと思うけど?」 「視線が痛い・・・ですわ。今更ながら、自分が立っているこの場所に掛かっているモノの重さというのを実感します」 観客の視線が集る場所に立っている界刺、フィーサ、マーガレットは各々の感覚で自分達に注がれる視線を感じ取る。 「それじゃあ、始めましょうか?」 「その前に1つ聞いておきたいことがあるんだけど」 「ん?何かしら?」 「君は・・・遠藤ちゃんの『絶縁帯電』に対する適切なアドバイスを送らなかったんじゃ無い。送れなかった。 何故なら、派閥内に電気系能力者が居なかったから。周囲に弱みを見せたくなくて、自分の派閥外の人間に頼むことができなかったから。そうだね?」 「!!」 界刺は、フィーサの人となりを改めて観察した上でこの結論を下した。フィーサは仲間を、つまり派閥内の人間を大事に思っている。 そんな彼女が、何故困っている遠藤に対して適切なアドバイスを送れなかったのか?それは、きっと・・・ 「・・・遠藤が困っていることは知っていたわ」 フィーサは界刺の問いに真正面から答える。 「貴方の言う通り、私の派閥の中に電気系能力者は遠藤しか居ないわ。だから、彼女に対して誰も適切なアドバイスができなかった。 遠藤は、入学してすぐに私の派閥に入ったせいか派閥外の友達が居ないの。だから、派閥内の人間しか頼れる人が居なかった。 本人は『派閥争いに巻き込まれるのが嫌でした』と言ってるけど、それが逆に仇となってしまった」 「それは、君も同じ・・・だろ?」 「・・・えぇ」 フィーサは、自嘲気味な表情を浮かべる。 「常盤台に派閥というのがあるとわかってから、ずっと派閥争いを繰り返していたわ。だから、私にも派閥外に友達は居ない。 レベル5の存在に打ちのめされながらも、色んな人に嫌味や嫌がらせを受けながらも、私は派閥の維持に努めたわ。・・・友達を失わないために。必死に・・・必死に!!」 一度派閥を作ってしまうと、他派閥の人間と交流を深めることが難しくなる。友達グループの枠組みを超えた常盤台の在り方。人脈・金脈が絡んだ複雑怪奇な在り方。 その在り方に・・・何時しかフィーサ=ティベルは囚われてしまった。自由に動くことができなくなってしまった。 そんな自分にできることは、作り出した派閥を維持すること。自分と付き合ってくれる仲間を失わないようにすること。 それを守るためなら他派閥に対して攻撃的になったり、『気位が高い』という様相を装ってみたり、監視カメラによる動向チェックまで何でもやった。 「・・・君はそれ以外での友達作りの手段を見失ってしまったんだね」 「えぇ。だから、今日の遠藤が取った行動は驚愕モノだったわ。この私ができないことを、あの娘は見事成し遂げた。貴方と苧環のおかげで」 「やっぱり・・・。監視カメラで発見したかったのは俺じゃ無くて・・・」 「遠藤よ。お茶会の準備に1人現れなかったから気になって」 監視カメラを使って遠藤を探していた最中に、その光景を見た。だから、行動を共にしていたマーガレットを連れて界刺達の元へ向かった。 「・・・結局私は臆病だっただけ。それを、遠藤の行動で気付かされたわ。勇気を持てば友達は作れるってことを・・・そんな当たり前のことをあの娘は教えてくれた」 「本当は、フィーサ様はあなたにお礼を言おうとしていたんです。遠藤に新しい友達ができる切欠を作ってくれたあなたに、フィーサ様は感謝の念を抱かれていましたから」 「そうだったのか。・・・悪かった。余計なことをしちまったな。ごめん、2人共」 「いいわ。だって、貴方のおかげでこんなワクワクする“講習”に招待して貰ったんだし。ねぇ、マーガレット?」 「そうですね。いずれにしても、『気位が高い』風を装っていたフィーサ様では、素直にお礼を言えたかどうかは怪しい限りですし」 「言うわね、マーガレット?」 「はい。フィーサ様の派閥に属していますから」 「「フフフッ」」 2人の少女は、互いに笑い合う。これが、彼女達の在り方。だからこそ、碧髪の男は敬意をもって相対する。 「それじゃ、そろそろ始めるよ?準備はいい?」 「えぇ」 「何時でも」 フィーサとマーガレットの了解を得た界刺は、ファッション勝負の会場となったこの庭中に響き渡るような大声を張り上げる。 「Ladies and 俺!!今から始まるは、互いの『自分の在り方(ファッションセンス)』を賭けた真剣勝負!! この界刺得世に挑むのは、フィーサ=ティベル マーガレット=ワトソン!!んふふっ・・・観客の皆様方。我等の勇姿を、『自分の在り方』をとくと御覧あれ!!!」 言い終えた瞬間、3人は同時に動いた。『自分の在り方』を証明するために。 初手はフィーサ。彼女の能力『斥力支配』による斥力球を界刺の近くに発生させる。基点となる空間座標から斥力球が形作られるまでおよそ3秒弱のタイムラグがある。 これは弱点であり、故にこそそれを生かした戦法も存在する。 ドン!!ドン!!ドン!! それは、時間差による斥力攻撃。最長基点距離である自身から52m内ならば、幾十もの斥力球を発生させることができる。 そして、この斥力は光を操る界刺にとっては厄介な代物であった。何故なら、斥力は光を曲げてしまうからである。 この能力の余波を受けた場合、『光学装飾』による装飾の数々が歪められる可能性大のため、界刺はフィーサから距離を取る。 今の界刺は、光に干渉するという自分にとって不利となる斥力の性質を利用して無色透明な斥力球の設置場所を特定するために、 わざと自分の周囲の可視光線を操作しまくっていた。基点となる球の中心部分は、球を発生させる前に僅かながらの斥力を発生させている。 そこへ可視光線をぶつけ、歪められた場所=斥力球の設置場所を感知し余波を避けているのだ。 『光学装飾』と『斥力支配』により、目に映る光景が様々に歪んでいる。界刺がフィーサの『斥力支配』の設置範囲外に出た瞬間、 グン!! 近付いて来たマーガレットの『真空力場』が襲う。 人類の生み出す科学技術が発展すれば何時か観測できるかもしれないエネルギー、すなわちダークエネルギーを操作する能力。 性質としては“反重力”。これだけならフィーサの『斥力支配』と同じような能力かもしれないが、『真空力場』の場合は発生させた力場が真空状態になってしまうのだ。 トラック1台をギリギリ吹き飛ばす威力を、しかし『光学装飾』でマーガレットの位置を把握していた界刺は“反重力”に逆らわずに同じ力の向きに跳ぶ。 バン!! “反重力”によって地面が抉れる。その余波を界刺も喰らい、吹っ飛ばされる。だが、ダメージ的にはそれ程では無い。 近くにいたマーガレットは、何故か“反重力”を発生させた場所から足早に遠ざかって行く。その間に体勢を立て直そうとした瞬間・・・ ギュン!! 風が発生する。『真空力場』によって真空状態になった空間の気圧は低くなっている。そして、風とは気圧の高い所から低い所へ吹く。 故に、真空状態になった空間目掛けて周囲の気圧が高い空間から風が殺到する。それに、界刺も巻き込まれる。 体勢を立て直すために立ち上がったことが災いしたのだろう、強烈な風に巻き込まれ真空状態になった場所に体が泳いで行く・・・ ドン!! そこに発生したのは、『斥力支配』による斥力球。地面を基点とした斥力球をモロに喰らった界刺は、空へ吹き飛ばされる。 発生した風に巻き込まれないように踏ん張るフィーサが、界刺が落下して来る場所に多数の斥力球を設置しようと準備する。一気に勝負を決めるつもりなのだ。 フィーサ達の優勢を見て、観客である常盤台生が色めき立つ。彼女達は、フィーサ達の勝利を確信したのかもしれない。 だが、一部の常盤台生はそうは思っていなかった。あの碧髪の男が、自分達を色んな意味で苦しめたあの界刺得世がこのまま終わるわけが無い。 それは、経験に基づく確信。その確信通りに、碧髪の男は行動を開始する。懐から ダークナイト を取り出し、赤外線通信を行う。 ビュッ!! それは、 ダークナイト に備え付けられた7つある機能の1つ・・・『樹脂爪 キャプチャークロウ 』。 赤外線を使用して目標の材質や厚さ等を瞬時に測定した後に、棒の先端に円形状の鉤爪を合成樹脂によって形成し、棒内にあるワイヤーと連結・発射するという、 かの『演算銃器』の性質を持ち合わせた『樹脂爪』が、庭に植えられている木―『斥力支配』の設置範囲外―を確実に掴む。 その後ワイヤーが急速に巻き取られて行き、 ダークナイト を握る界刺は木に直撃する。直撃とは言っても、ちゃんと足から着いた。 その衝撃は相当なものだったが、何とか我慢して『樹脂爪』をワイヤーから切り離し、地面に足を着ける。 意表を突かれたフィーサとマーガレットが、界刺が着地した場所へ向かおうとする。 ピカァー!!! 突如自分達の周囲を覆ったのは、光柱。辺りの光景が、全て光に覆い尽くされる。 フィーサ・マーガレット共にサングラスを掛けているため、目への過剰刺激こそ無いものの、光輝く“白色”以外の光景が何も見えなくなる。 光を歪ませる『斥力支配』も、自分に近い位置では発生させ難い。“白色”で覆い尽くされた空間では、座標設定に必要な距離の把握も困難。 それを看破したが故の光柱。前も後ろも右も左もわからない、方向感覚の幻惑。この幻惑術にフィーサとマーガレットが困惑しているその隙に・・・ ドコッ!!ベキッ!! 何時の間にか近付いていた界刺の拳がフィーサの腹に、警棒がマーガレットの下顎に叩き込まれる。 2人共に吹っ飛ぶが、斥力球によるダメージが大きいのか威力は然程無かった。 吹っ飛んだことを利用して、フィーサとマーガレットは『斥力支配』と『真空力場』を発生させようとする。 自分が殴られたことにより、界刺の位置は大体把握したために。だが、 ドドドドドオオオォォォッッ!!!! それは、色の暴力。『光学装飾』によって、フィーサやマーガレットの目に多種多様の色彩情報が叩き込まれる。 殴ったことにより、少女達が掛けているサングラスがズレた。それを利用した点滅・点灯を繰り返す何百種類もの色の暴力が、少女達に襲い掛かる。 先程までの“白色”一色からの急激な変化に、フィーサとマーガレットの脳は情報を処理し切れない。能力行使に必要な演算さえまともにできない思考状態。 過密情報を叩き込まれ、一気に気分が悪くなる。それでも、何とか色の暴力を遮断しようと目を瞑るが・・・ ドカッ!!バキッ!!ベコッ!!ガキッ!! そんな隙を碧髪の男が見逃す筈も無く、正真正銘の暴力を喰らう。拳を、蹴りを、警棒を何発も。やはり威力こそ低いものの、積み重なればダメージは蓄積して行く。 サングラスも吹き飛ばされ、顔からも血を流し、だが思考機能が回復していない2人は蹲って耐えるしか無い。そして・・・ ドン!! いち早く思考機能が回復したフィーサが、自分の体近くに斥力球を発生させる。自分やマーガレットをも巻き込んだそれは、この場からの緊急離脱の意味もあった。 威力は抑え目にした斥力球により、フィーサ・マーガレット・界刺は吹っ飛ばされる。それと同時に、色の暴力も光柱も消えた。 光柱によって3人の姿が見えなくなっていた観客は、今の3人の姿を見て驚愕する。碧髪の男もボロボロだが、2人の少女も体中が傷だらけになっていたからだ。 男は口に溜まった血反吐を吐き、少女達は顔から流れている血を制服の裾で拭う。互いの『自分の在り方』を賭けた真剣勝負の行方は、未だ収束の気配を見せない。 「とんでもないなぁ、その『斥力支配』と『真空力場』ってのは。おかげで、午前中の“講習”では一撃も貰わなかった俺がこの有様だよ」 「貴方って、本当に容赦無いわね。ここまで傷だらけにされたのなんて、生まれて初めてのことよ。フフフッ。でも・・・まだこの楽しい時間は終わらないのね」 「そうですよ、フィーサ様。それにしても、フィーサ様と立てた作戦を乗り越えて、その上逆襲まで仕掛けて来るとは・・・。さすが」 ボロボロな界刺・フィーサ・マーガレット。だが、3人共に顔は笑っていた。何故なら、3人共にこの“講習”を楽しんでいるからだ。 「2人共、楽しんでいるかい?」 「えぇ!本当に楽しい!すっごく楽しい!こんな気分は、本ッッ当に久し振り!!」 「私は、そんな楽しげなフィーサ様を見ることができてすごく嬉しいです。もちろん、私自身も楽しんでいますが」 はしゃいでいるフィーサと、クールな雰囲気の中に喜びを混ぜているマーガレット。これが、彼女達の在り方。その在り方を見ることができた界刺は、思わず笑い声を零す。 「んふふっ」 「・・・何で笑ってるの?」 「いやぁ、君はそういう表情が似合うなぁって」 「ッッ!!な、何を言ってるの!?こんな戦闘の最中に・・・!!」 「だからこそだよ。これが、『自分の在り方』を競い合っている意味でもある。醍醐味でもある。 『自分の在り方』を示す姿を見ていれば、その人間がどういう人なのかってのがわかって来る。だから・・・やっぱり君はそういう表情が似合っていると思うんだ」 「・・・・・・。///」 「ありゃ。何か茹蛸状態になっちゃった」 「あなたは・・・本当に女ったらしですね。あれだけの女性から慕われているというのに、更にその手を広げられるおつもりですか?」 界刺の言葉に、流している血の色に負けないくらい顔を真っ赤にして俯いてしまうフィーサ。そのやり取りに呆れてしまうマーガレットのツッコミが、碧髪の男へ向けられる。 「・・・そのことでちょっと相談があるんだけど。2人共、座って座って」 「・・・ハッ!な、何かしら?」 「・・・?」 何故か戦闘そっちのけ、観客ほったらかしで座り込む3人。 「マーガレットが指摘したことだけど、俺ってそんなにモテてんのか?」 「貴方・・・!!」 「自覚無し・・・と来ましたか」 「一応そんな感情を俺に向けてる奴を客観的に考えてみたんだ。この常盤台なら、今ん所バカ形製、苧環、リンリン・・・一厘のことね。それから珊瑚ちゃんに嬌看って所か。 他の学校だと桜に涙簾ちゃん・・・。いや、涙簾ちゃんは違うか。あの娘は、他の娘とは違って“特別”だからな・・・」 「・・・その“特別”を入れたら7名も・・・!!」 「・・・何という女ったらし・・・!!」 フィーサとマーガレットは、界刺の言葉に心底呆れてしまう。 「と言っても、俺はそいつ等含む女連中に酷い目を喰らって来たからな。今じゃあ、女性不信状態になっちまってる。恋愛感情も抱かないし、発情もしないって有様だ」 「女性不信・・・!!貴方、そんな状態になっているの!?」 「うん」 「でしたら、何故私達とこうして付き合えて・・・?」 「君等を女として見ていないから」 「「ブッ!!」」 「・・・そういう反応は、数時間前にも見たね」 「・・・この私が女として見られていない?な、何と言う屈辱・・・!!」 「それ、苧環も同じことを言ったね。君達って、もしかして気が合うんじゃない?」 「ブッ!!!な、何てこと・・・!!あの“苧環パー娘”と同じことを口走っちゃったなんて・・・!!」 「“苧環パー娘”?何それ?初耳なんだけど」 「あいつって、元々は天然パーマなの。普段はストレートパーマにしてるんだけど、何時だったか普段利用している美容室の機械が不調だったせいで、 元からの天然パーマが更に酷くなったの。丁度その時期がテスト期間中だったから、休むに休めなくて・・・」 「仕方無く君達の前に姿を現したと・・・。ちなみに、どれくらい酷かったの?」 「あれは、何と言うか・・・雲?」 「どちらかと言うと、雲より綿菓子みたいな爆発具合だったような・・・」 「「「チラッ」」」 「なっ!?な、何で私を見ているのよ、あの3人は!?」 界刺、フィーサ、マーガレットの視線が急に自分へ向けられたことに対して不審がる苧環。 「(モコモコ)」 「!!!」 そんな苧環の瞳に映るのは、界刺が己の頭の上にある“何か”を触ろうとしている姿。まるで、そこにある“何か”を触っているかのような態度を見て、苧環は硬直する。 そして・・・ ダッ!! 苧環は、界刺達へ向けて全力で駆け出した。それを予測していた界刺は、フィーサに対して指示を出す。 「フィーサ!距離5!2秒!手加減!」 「!!」 苧環が電気を用いた身体能力強化によって、猛スピードでこちらに近付いてくる。 フィーサは界刺の指示を瞬時に理解し、自分から5m離れた地点に2秒経った後に、『斥力支配』による斥力球を発生させる座標を設置する。 その基点が約3秒のタイムラグを経て斥力球となる。威力は抑え目のソレが発生した直後に、こちらに駆けていた苧環と衝突する。 「ブハッ!?」 斥力球と衝突した苧環は、反動込みで勢い良く後ろへ倒れる。 「痛っ・・・!!」 「大丈夫かい、“苧環パー娘”?」 「!!!」 地面に頭を打った苧環が痛みに苦しむ中、近寄って来た界刺が少女を渾名で呼ぶ。その言葉を認識した瞬間、苧環は痛みをおして体を起こす。 「か、界刺さん!!そ、その渾名で私を呼ぶのはどうか止めて下さい!!お、お願いします!!」 「・・・何だかその口調で話されると、少し鳥肌が立って来る。ブルッ!」 「あら。いいじゃないの、“苧環パー娘”?その渾名って、ある意味おいしいと思うわよ?」 「フィ、フィーサ・・・!!やっぱり、あなただったのね!!界刺さんにその渾名を教えたのは!!」 苧環は、ものすごい形相で余裕綽々なフィーサに食って掛かる。 「さぁね。どうだったかしら?全然覚えていないわ。フフフッ・・・」 「フィーサ・・・!!」 「・・・もしかして、君がフィーサに馬鹿にされたっていうのは・・・“苧環パー娘”か?」 「だ、だからその渾名をあなたが言わないで下さい!!う、うう、うううぅぅ・・・!!」 「お、おい!?な、何も泣くこたぁ無ぇだろ!!」 「だ、だってえええぇぇぇっ!!!そ、その渾名だけは・・・界刺さんに知られたくなかったんですよおおぉぉっ!!!うううううぅぅぅ!!!」 「うっ・・・。お、苧環のこんな姿、初めて見たかも。ねぇ、マーガレット?」 「そ、そうですね。何時もはクールでビシっとキメている苧環先輩が、こんな姿を衆目に晒すとは・・・。恋とは恐ろしいものですね」 その場にへたり込んで泣き喚く苧環の姿に、フィーサとマーガレットは若干引いてしまう。これが、あの苧環華憐なのか? その疑問は、観客である常盤台生全員の共通見解でもあった。そして、こう思った。『恋とは、ここまで少女を変えてしまうものなのか』と。 (この時点で、形製、一厘、苧環、真珠院、鬼ヶ原が界刺を好いている可能性があることは、周知の事実となっていた。 この内苧環だけが可能性の枠内だったのだが、今の行動で事実と相成り、この5名が同じ男を好きになっていることが白日の下へ晒された) 「わかったわかった。君のことはその渾名で呼ばないから、いい加減泣き止めって」 「・・・本当?」 「あぁ、本当だ。苧環って呼べばいい・・・」 「華憐」 「へっ?」 「華憐って呼んで。あなたなら・・・私の下の名前を呼んでもいい。いいえ、下の名前で呼んで欲しい!! パパやママにしか呼ばれたことが無いその言葉を・・・あなたに」 「(こ、この流れは・・・!!な、何か卑怯じゃね!?いや、人のことは言えないけど!!)」 涙で瞳を潤ませた苧環が、頬を紅潮させながら上目遣いで懇願する。その視線を直に向けられた界刺は怯む。 周囲に居るフィーサとマーガレットは、ニヤニヤしながら傍観するばかりだ。こいつ等、絶対にこの状況を楽しんでやがる!!と界刺は思うが、今はそれ所では無い。 普段の雰囲気からは想像も付かないその声色に含まれているのは・・・甘え。苧環は界刺に甘えているのだ。それは、心を完全に許していると言い換えることもできる。 「界刺・・・さん・・・」 「ぐぬぬ・・・!!」 これに応える応えない如何で、苧環と界刺の関係は変わってしまう。それが判っているからこそ界刺は言い淀むが、苧環は尚も甘えて来る。そして・・・男は決断する。 「か・・・かか・・・華、憐。華憐。こ、これでいいのか?」 界刺は、少女のことを『華憐』と呼ぶことを決めた。普段は色んな渾名を(勝手に)付けて呼んでいる界刺だったが、いざ逆の立場になってみるとここまで大変なものなのか。 そして・・・男の決断を受け取った少女―苧環華憐―は満面の笑みを浮かべてこう言った。 「嬉しい・・・!!!」 その笑みを浮かべた少女の姿こそ、苧環華憐の本来の姿。彼女もまた、派閥の長として色んな苦しみを抱いていた。それで、幾度も顔を歪ませることもあった。 そんな彼女が見せた満面の笑みは・・・界刺だけで無く、フィーサやマーガレットさえ見惚れる程のものだった。 「・・・苧環」 「・・・何?」 フィーサが苧環に近付いて行く。先程界刺に告げ口された少女の声を聞き、僅かながら不機嫌になる苧環の耳に、 「ごめんなさい。もう・・・絶対に言わないわ。だから・・・ごめんなさい」 「フィーサ・・・!!」 フィーサの謝罪の声が聞こえて来る。それは、1人の少女としてある少女に向けられた謝罪。派閥の長としてでは無い。 フィーサの中にある何かが、苧環の笑みを見た瞬間に変わったのかもしれない。気付かされたのかもしれない。 自分と同じ派閥の長に立つ少女は、恋する人に名前を呼ばれて満面の笑みを浮かべる普通の少女でしか無かったのだということを。 「・・・わかったわ。もう、絶対に呼ばないでね。いいわね、フィーサ」 「わかったわ。マーガレットも、いいわね?」 「私は一度も呼んでいないのですけど・・・わかりました。今後も絶対に呼ばないようにします」 「俺は時たま呼ぶかもしれないなぁ・・・性格的に」 「か、界刺さ~ん・・・」 「んふふっ。いい表情するじゃないか、華憐。君もその表情が似合っているよ。こりゃ、やっぱり華憐とフィーサは気が合う友達になれそうだ」 「私が!?フィーサと!?」 「じょ、冗談じゃ無い!!誰がこんな天パと・・・・!!」 「わ、私の方こそ冗談じゃ無いわ!!何でこんな奴と!!」 「喧嘩する程仲がいいって言うじゃ無い。ねぇ、マーガレット?」 「そうですね・・・。私もフィーサ様と苧環先輩は気のおけないお付き合いができると思います」 「マ、マーガレット!?」 「私達派閥に属する人間では、派閥の長であるフィーサ様と本当の意味で同じ位置に立つことはできないのです。 あなたと同じ位置に立つことができるのは・・・同じ派閥の長である人間。その中でも、苧環先輩はフィーサ様と良きお付き合いができる方だと、私は考えます」 マーガレット自身、フィーサの抱く苦しみを共に背負うことのできない辛さを味わって来た。何時も隣に居るのに、本当の意味で彼女の力になれない。 その辛さを他人(おだまき)に押し付けるのでは無い。これは、信頼。以前から、フィーサと苧環が度々口論している所に同席していたが、 話を聞いてみると互いに遠慮無しに言いたい放題という様相で、逆に言えば互いに本音をぶつけられるということでもあった。 この方なら、フィーサと同じ位置に立つことができるかもしれない。常々そう思って来たマーガレットが見出した、これは最初で最後のチャンス。 「俺も、マーガレットの意見に賛成だ」 そんな少女の願いを、碧髪の男が後押しする。 「きっと、君達が思ってる程君達の相性は悪くないと思うよ?口論の末に友達になるか・・・。 んふっ、何だか俺と真刺の出会いを思い出すなぁ。あっ、真刺ってのは俺と同じ成瀬台に通う親友のことね」 「あ、貴方にもそういう経験があるの?」 「あるよ。あの頃は、互いに死闘を繰り広げたもんだぜ。何せ俺と真刺は、最初は敵同士だったからな」 「えっ!?そ、そうなの、界刺さん?」 「うん。あいつとは、『本気』で殺り合った。所謂殺し合いってヤツを何度もやった」 「『本気』・・・!!貴方が・・・!!」 『「己の正義の下、悪は全て許さず」。界刺・・・貴様は“悪”だ。この不動真刺が、貴様を地獄の底へ叩き込んでやろう!!』 『テメェが“正義”?ハッ、世界の一部でしか無ぇ野郎が、何を偉そうなことをほざいてやがる。いいぜ。来いよ、不動。テメェは、俺の「本気」でぶっ殺してやる!!』 「んふふっ。懐かしいねぇ。あの頃は、俺も真刺も血気盛んだったからなぁ。血みどろの殺し合いを繰り返していたねぇ」 「・・・笑いながら話すことかしら?」 「・・・たぶん、違うんじゃないかしら?」 「・・・私もフィーサ様と同意見です」 楽しげに話す界刺に、苧環、フィーサ、マーガレットは首をかしげるばかりだ。そんな物騒な話を笑い話にしてもいいのだろうか? 「ちなみに、俺の仲間の中で殺し合いを行う覚悟を持っているのは俺と真刺、仮屋様に涙簾ちゃんの4人だね。 バカ形製とサニー、桜は持っていないかな。まぁ、本当は持つような代物じゃ無いけど」 「・・・涙簾という方は、貴方が“特別”と言っていた女性のことよね?その方も殺す覚悟を?」 「“特別”・・・!?あの人が界刺さんにとって・・・!?」 フィーサの質問に苧環が反応する。昨日会ったばかりの碧髪の少女・・・水楯涙簾。 苧環は、彼女が界刺にとって“特別”である理由が気になった。それは、フィーサも同じく。理由は各々で違うが。 その回答側である界刺は、表情を険しくしながら言葉を放つ。 『私は、あなたにふさわしくない汚れた女。でも、あなたが居ないと私は私でいられなくなる。殺すなら今の内ですよ、界刺さん?あなたに殺されるのなら、私は本望です』 『君の考えはよ~くわかった。だったら・・・君の世界をこの界刺得世が思いっ切り広げてやる!!俺の命に懸けて、君の世界を色とりどりに飾り付けてやるよ!!』 「・・・涙簾ちゃんは“特別”なんだよ。殺す覚悟ってのも、その“特別”の一部でしか無い。 あの娘は・・・俺が何とかしなきゃいけない女性だ。まぁ、それ以上は君達が知るようなことじゃ無いよ。これは、俺とあの娘の問題だ。いいね・・・!?」 「・・・わかりました」 「・・・これ以上は聞かないわ」 界刺の言葉が重くなったのを察知し、苧環とフィーサはこれ以上の追及を止める。聞かない方がいいと本能が囁いたが故に。 「話が逸れちゃったけど・・・君達は一度腹を割って話し合ってみるといい。派閥とか関係無しに。きっと、いい関係が築けると思うよ?」 「・・・フィーサ。どう思う?」 「・・・何で私に聞くのよ。貴方の方こそどうなのよ?」 「わかんないから聞いているのよ!」 「私だってわからないわ!」 「だから、一度話し合えばって言ってるじゃねぇか。人の話聞いてる?」 「「そうだった・・・」」 「クスッ。やっぱり、お二方共気が合いそうですわ」 苧環とフィーサは、少しの間互いにそっぽを向いていた。だが、意を決して2人共に正面に向き直った。 「・・・とりあえず、話すくらいならしてあげてもいいわ」 「・・・とりあえず、お茶を飲むくらいならしてもいいわ」 「君達・・・ここに来てもお茶会の話かよ。どんだけお茶会が好きなんだ、君達?」 「だ、だっておいしい紅茶と甘いケーキの組み合わせが抜群だし・・・」 「お茶の香りを楽しみながら、店内に流れる音楽を聴くのもまた乙なものよね」 「甘いケーキ・・・甘いケーキ・・・。はぁぁ・・・」 「・・・よくわかんねぇ・・・」 お茶会に等参加したことが無い界刺にとって、少女達が語る楽しみはサッパリ理解不能だった。 だが・・・これなら・・・。だから、界刺は決断する。 「よしっ!そんじゃ、そういうことで。ファッション勝負もこれにてお終い。あ~、しんどかった」 「「「!!??」」 ファッション勝負。すなわち、自分VSフィーサ マーガレットは終了だと宣言したのである。 「ちょ、ちょっと待ちなさい!!ま、まだ勝負は・・・」 「あぁ、それなら君達の勝ちでいいよ。俺は棄権ってことで、一つよろしく!」 「なっ・・・!?あ、貴方はそれでいいの!?『自分の在り方』で私の在り方を・・・常盤台の在り方を叩き潰すんじゃ無かったの!?」 フィーサは混乱する。この男なら、まだ自分達と戦える余力は十分残っている筈だ。 それに、あれ程常盤台の在り方を叩き潰すと息巻いていた男が、何故自分から負けを認めるのか、フィーサには理解できなかった。 「『物事を解決に導けるなら、勝敗や介入には頓着しない』」 「えっ?」 「俺の信念みたいなものさ。普通はファッション勝負の時は例外なんだけど、今回の場合はその中でも特例かな? 君の在り方は十二分に見せて貰ったし、俺が“本当に”潰したかった常盤台の在り方は君達が壊したみたいだしね。だったら、これ以上の戦闘に意味は無いよ」 「壊した・・・?私達が?」 「そう。『派閥に必要以上に縛られる』という常盤台の在り方を、他でも無い君達派閥の長がぶち壊した。 つくづく君は、俺の目算を狂わしてくれたよ。こういう疲労感は、あんまり好きじゃ無いなぁ。ハハッ」 界刺はフィーサと苧環を交互に見て言い放った。この2人は、きっと良い友達関係を築けるだろう。 それは小さな一歩、だが確かな一歩。常盤台の在り方を本当の意味で変えられるのは、常盤台の生徒。自分は切欠でしか無い。 それがわかっていたからこそ、界刺は引き下がる。自分が望んでいたものは、目の前の少女達が自らの意思で掴み取った。 「俺も十分に楽しんだ。それに、この後には“バカルテット”との“講習”も控えているしね。君達は物足りないかもしれないけど、ここら辺でお開きというこ・・・」 「・・・納得行かないわ」 「フィーサ様!?」 界刺の視線は、既に自分から離れた。それを感じ取ったフィーサが、界刺へ詰め寄る。 「貴方は、まだ戦える筈よ!!なのに・・・ハッ!!そうか・・・!!貴方の一撃一撃がやけに軽いと思っていたけど、 それはダメージのせいじゃ無くて、貴方自身がやる気を失いかけていたせいね!!私が貴方の目算を狂わしたことによって!! くぅ~、こんなんじゃあ、全然納得できないわ!!これで終わりじゃあ、消化不良過ぎる!! 確かに『本気』じゃ無くてもいいって言ったけど、『その気』すら失いかけてたんじゃあ話にならないわ!! むしろ、そんな貴方にボコボコにされた私やマーガレットは、恥晒しもいい所よ!!!」 憤慨するフィーサ。彼女も、内心では『その気』の界刺と心行くまで戦いたかったのだ。その結果として敗北するのならいい。そう考えていたのに。 実は、当の対戦相手は最初から『その気』すら失い気味で戦闘していたのだ。これは、手加減どうこうのレベルじゃ無い。 こんなことで勝利という結果を『贈られても』、ちっとも嬉しくない。むしろ、そんなやる気の無い相手に苦戦した自分が情けなくなってしまう。 「とは言ってもなぁ・・・。俺、もう君達と戦闘する意思が無くなっちゃったしなぁ。でも、勝敗自体はハッキリ付けないと観客が納得しないだろうし。 やっぱり、君達の勝ちってことで。それか、引き分けみたいな形にでもする?」 「どっちも嫌よ!!」 「・・・それじゃあ、勝負はお預けみたいな形にでもする?とは言っても、俺がもう一度常盤台に来ることはまず無いだろうし。他に、俺が君達と戦うなんて機会は・・・」 「・・・あっ!フィ、フィーサ様!少しばかりお耳を拝借(ゴニョゴニョ)」 「(ゴニョゴニョ)。・・・成程。それは妙案ね。でかしたわ、マーガレット!」 「えっ?何か思い付いたの?」 「えぇ・・・。ス~。ハ~。・・・皆ァー!!!聞いてぇー!!!」 「なっ!!?」 マーガレットから耳打ちされたフィーサが、観客である常盤台生に向かって大声を挙げる。 「私・・・フィーサ=ティベルはー!!この男に敗北したわー!!!」 「「「えええええぇぇぇっっ!!!??」」」 「ちょっ!?な、何言ってんの、フィーサ!?」 「だって、貴方は貴方の望みを果たして、私は私の望みが果たされていないんだもの。貴方が自分の望みを果たす“速度”に、私は敗北したの。おわかり?」 「そ、それって何だか無理矢理じゃね?というか、そんなことを言ってどうなるって・・・」 「だからぁー!!!この借りは、2学期にある『大覇星祭』で返すことにしたわぁー!!!」 「な、何ぃー!!?」 界刺は、予想外の言葉―『大覇星祭』―に驚愕する。それは、学園都市にある全学校が合同で行う体育祭。 フィーサは、今回のリベンジマッチを『大覇星祭』で行うと宣言したのだ。 「この男が通う成瀬台高校とぶつかった時こそが、界刺得世へリベンジする時よ!!私達常盤台に通う人間を、散々虚仮にした男を叩き潰すチャンスよ!! 皆ァー!!この男にいいように振り回されたまま終わってもいいの!?」 「嫌ァー!!」 「潰す!!」 「打倒界刺得世!!」 「だったらー!!それまでに一生懸命努力して、自分を高めて、来たる『大覇星祭』の時にこの男を完膚無きまでに叩き潰してあげましょう!!! そのためには、派閥同士で下らない争いをしてる場合じゃ無いわ!!この男に勝つには、派閥に囚われてちゃ駄目!!派閥を越えた連携が必要よ!! 何せ、派閥の長である私や苧環を撃破した男!!生半可な努力じゃ、また返り討ちを喰らうわよ!!いい!!?」 「わ、わかりました、フィーサ様!!」 「ウチの派閥の長に直談判しないと。あの男に勝つには、派閥に拘っていては駄目!!」 「フィーサに賛同するのは癪だけど、あの男を打ち負かすためなら・・・。フッ、認めるしかないようね・・・あの男の実力を!!」 「打倒!!界刺得世!!!」 「「「おうぅっ!!!!!」」」 「フィーサ様・・・すごく活き活きしていらっしゃいますね。このマーガレット、今まさに感激の極みです・・・!!」 マーガレットが感涙している傍で、フィーサは天空に向かって握り拳を挙げる。それに呼応する他の常盤台生。 彼女達は、自分達を“素人集団”と揶揄し、数々の常盤台生を撃破した男に打ち勝つ目的の下一致団結した。『打倒!!界刺得世!!!』の名の下に。 「・・・・・・本当に、あの娘は俺の目算を狂わすのが好きだな。つーか、『大覇星祭』の時に成瀬台の連中にどんな顔して話せばいいんだ? あいつ等、名門常盤台が自分達に本気で勝負を仕掛けて来るなんて想像すらしねぇぞ?」 「フフッ。でも、これで界刺さんの望みは益々叶って行くんじゃない?これが切欠で、派閥を越えた交流が活発化していけばいいんだけど」 「気軽に言うね、華憐は」 「そうでもないわ。私もこれから忙しくなるかもだし」 界刺の隣に苧環が座る。界刺は憂鬱そうな声で、苧環は明るめな声で会話する。 「ハァ・・・。まぁ、いいや。その時はその時だ。それより、最後の“講習”だ。いい加減俺も疲れて来たし、さっさと最後の仕事に取り掛かるとしますかね」 「・・・もう一踏ん張りですね」 「君の口調って、何か安定しないね。やっぱり、俺を好きになったせいか?」 「ブッ!!!か、界刺さん・・・!!!」 自分の気持ちを看破されていたことに驚く苧環。 だが、さすがの界刺も今までのことを客観的に考えれば、その結論に行き着いてしまう。簡潔に言えば、『バレない方がおかしい』のだ。 「女にモテたいと必死になっていた頃が嘘のようだぜ。んで、こんな時に限って女性不信状態とは・・・。こりゃ、世界が俺を僻んでいるのかもしれねぇな」 「か、界刺さん・・・!!」 「華憐。俺はこんな状態だ。君の恋に俺が応えられる保証は無い。それでも・・・君は俺を好きでいるのかい?」 男は、自分に恋心を抱く少女に向けて確認を取る。そして、少女は自分が恋する男に確と応える。 「はい。私は、あなたが好きです。界刺さんが、好きで好きで堪らないんです。 あなたと実際に過ごした時間は1日にも満たないのに、この恋心も今日自覚したばかりなのに、自分の心に溢れ出すこの激しい感情を止められないんです。 これが、私の抱くあなたへの嘘偽りの無い気持ち。だから・・・私はあなたを好きでいようと思います。 あなたが“答え”を出すその時まで・・・私はこの気持ちを持ち続けようと思います」 「・・・どんな“答え”でも?」 「・・・はい!」 「・・・ふぅ」 そう言って、男は最後の“講習”へと移る。自分の視界に入って来るのは、“常盤台バカルテット”の4名。 見上げる先にある雲は厚さを増し、太陽も隠れる程の天気模様。本日最後の“講習”は、文字通り最大の嵐を伴って常盤台を通り過ぎようとしていた。 continue!!
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金束晴天は、常盤台に通う中学2年生である。とある財閥の令嬢なのだが、幼稚園の頃から学園都市で生活していたせいか、お嬢様っぽさ皆無である。 彼女自身、親の期待に応える為に必死になって勉学・能力開発に努め、結果無事に学園都市において5本指に入る名門校常盤台中学へ入学することができたのだが、 入学してみたら周りには派手な能力ばかり。その上、同級生に超能力者が居るという現実が彼女に襲い掛かった。 入学後に、自身の能力が伸び悩んでいるのも手伝ったのだろう。今では、腐ってはいないもののすっかり“負け犬根性”が染み付いてしまっていた。 金束自身は、この“負け犬根性”というのを割りと肯定的に受け取っていた。常盤台に通う生徒は、総じてお嬢様なせいか矜持(プライド)の高い性格が多かった。 その中で、高過ぎる矜持を捨てることで何かを為すこともできる筈だ。レベルの高さや能力の強さだけに囚われていては、何時か足元を掬われる。 そう考え、今まで必死こいて生きて来た。その過程で、銀鈴、銅街、鉄鞘というかけがえの無い親友を持つこともできた。 『ブラックウィザード』と呼ばれるスキルアウトから助けたことで、真珠院という後輩を持つこともできた。何時しか、金束自身にも、ある種の自信が付き始めていた。 “負け犬”にしては順風満帆な学生生活を送っていた・・・そんな時に現れた碧髪の男。成瀬台高校2年生の界刺得世。 彼は、金束が定義する『レベルが高いから強いんだ』的な高位能力者では無い。また、自身が持つ能力の強さに溺れていない。その上矜持も高くない。それ故に・・・強い。 事実、一厘・真珠院・津久井浜・苧環・フィーサ・マーガレットの6名がこの男に挑み、いずれもが敗北を喫した。 その姿は・・・かつて金束自身が思い描いていた『自分の在り方』。常盤台へ入学する前の自分が目指していた姿。 “負け犬”でも『レベルが高いから強いんだ』的な人間でも無い。本当の意味で強い人間。自分が憧れて・・・目指して・・・でもなれなかった理想。 そんな、自分にとっての理想に居る男が自分の“負け犬根性”を叩き潰すと宣言した。その言葉を聞いた瞬間・・・金束晴天は微かに震えた。 「・・・1つ聞きたいんだけど」 「ん?何かな、晴ちゃん?」 「・・・ハァ。・・・何でアタシ達との勝負を受ける気になったの?最初は『面倒臭い』って言ってたくせに」 太陽は隠れ、風も強く吹き始めたこの庭には界刺と“常盤台バカルテット”が立っている。 「気が変わったから」 「はっ!?何それ!?」 「『ブラックウィザード』について色々話していた時に、ふと思い出したんだ。君が“負け犬”どうこう言ってたことを。 んふっ、思い出さなかったら君達との勝負を受けるつもりはなかったんだけど、思い出しちゃったからね。 この際、叩き潰しておこうかなって思って。後腐れの無いように、ボッコボコにしとこうって」 界刺が、“バカルテット”の“講習”への参加を認めた理由を聞いて唖然とする金束、銀鈴、銅街、鉄鞘。ようは、唯の気紛れなのだ。 「ンフフ~♪晴ちゃんをボコボコにするんですか~♪・・・そんなことを許すとでも・・・!?ンフフ~♪返り討ちにしてあげます~」 「アタイ達がおまんをボコボコにしたるけん、覚悟しぃや!!」 「私の友達を傷付ける人は・・・絶対に許しませんです!!」 「・・・君等が俺に勝負を挑んで来たんじゃなかったっけ?まぁ、いいや。そんな君達に、1つ忠告しておこう」 「忠告?何よ?」 銀鈴達の言葉に呆れる界刺が言い放つ忠告。それは、真剣勝負の意味。 「今回は、少しだけ『本気』で行くよ?周りが見えなくなる程『本気』を出すわけじゃ無いけど」 「「「「!!?」」」」 界刺の『本気』。それは、『相手を殺す気』。今までの“講習”でついぞ見せなかった『本気』の断片を、 よりにもよって自分達に出すと碧髪の男は忠告して来たのである。 「ど、どうしてよ!?ア、アタシ達なんかより、フィーサや苧環先輩と戦っていた時に出すようなモンじゃ無いの!?」 「ふ~ん。そんなに、俺が恐いのか?・・・最初に俺に見せた威勢の良さは何処へ行った・・・晴天・・・!!?」 「!!!」 界刺の目が、変わった。目は見開かれ、瞳孔も開いている。背丈の関係から自然と見下される形になっているその視線には・・・殺気が含まれていた。 「情けねぇな。たかが、俺の『本気』の断片だぜ?俺と戦うっていうテメェ等の本気度はその程度かよ?ハハッ、こりゃ幼稚園児並の小心さだな」 声にも殺気が含まれ始める。醸し出す雰囲気が一変する。 「だが、何処ぞの“負け犬”よろしく尻尾巻いて逃げるなんて選択肢をテメェ等に与えるつもりは無ぇ。一度、このステージに立ったんだ。 テメェ等がこのステージから降りる手段は2つだけだ。テメェ等が俺をボコボコにするか、俺がテメェ等をボコボコにするか、2つに1つだ」 碧髪の男は、懐から ダークナイト を取り出す。そして、ある赤外線通信を行う。 「これが、さっき言っていた ダークナイト 。テメェ等も、午前の“講習”で見ただろ?」 「そ、それが何だって・・・」 「今さっき、ある赤外線通信を行った。それは、『閃光剣』を起動させるための通信だ。テメェ等には光の“剣”って言った方がわかりやすいか?」 「光の・・・“剣”・・・!!」 「そ、それって・・・!!」 金束達も見た、それは一厘や真珠院が操作する土の塊を融解した光の“剣”。 「これは、千度単位の熱を纏う熱剣だ。当然、人体に当たりゃあ火傷なんかじゃ済まねぇ。当たり所が悪かったら・・・ヤバイな」 「ま、まさか・・・」 「そのまさかだよ。テメェ等と戦う時は、最初から『閃光剣』を使わせて貰う」 『光学装飾』により装飾された『閃光剣』に切っ先を、金束達に勢い良く向ける。 「んふっ、大怪我を負いたくなけりゃあテメェ等も死に物狂いで来い。余力なんて出し惜しみする暇なんて無いぜ? 1つの油断、1つの判断ミスが自分の身を脅かすんだ。全力で俺に挑むんだな」 「「「「・・・!!!」」」」 金束達は、今ここに至ってようやく自分達が置かれた境遇の切迫さを理解する。自分達の甘さを理解する。 相手は、そんな自分達の甘さを見透かすかのように、己が持つ『本気』の断片まで引っ提げて“講習”に臨もうとしていた。 「そんじゃあ、とっとと始めるか・・・」 「ちょ、ちょっと待った!!」 「あぁ?何だ、怖気付いたのかよ?だが、逃げるなんて真似は・・・」 「ち、違う!!さ、作戦タイム!!」 「・・・はっ?」 金束は、自分達の体勢を立て直すために作戦タイムを要求する。 「ちょ、ちょっとこっちの作戦を見直したいだけよ!!に、逃げる気なんて無いから!!本当よ!!?」 「そ、そうそう!!せ、晴ちゃんがあなたから逃げるわけないですよ!!」 「ア、アタイ達が全力で行くことにゃー変わりないけん!!」 「うんうん!!皆さんの言う通りです!!」 金束、銀鈴、銅街、鉄鞘の4名はいずれも冷や汗ダラダラで弁明する。その必死さに、界刺も渋々納得する。 「・・・いいぜ。さっさと作戦を立てて来いよ。言っとくが、逃げるなんて真似を取った時点で俺がどういう行動に出るか・・・わかってるよな!?」 「「「「(コクンコクン)」」」」 「OK。そんじゃあ、作戦タイム開始・・・」 ダダダダダァァァッッ!!!! 「・・・逃げ足はやっぱり速ぇな。さぁて、どんな作戦で来るか。俺も“らしくない”真似をしてるんだ。 少しは歯応えのある作戦を立てて来いよ、“バカルテット”・・・!!」 “バカルテット”の逃げ足の速さにまたも呆れながら、しかし彼女達が立てて来る作戦について思いを馳せる界刺。 その視線の先から・・・金髪の少女が歩いて来る。それに気付くのに然程時間は掛からなかった。 「界刺・・・!!」 「形製・・・」 “バカルテット”相手に『閃光剣』を持ち出した時点で、界刺が『本気』になりかけていることを察知した少女―形製流麗―は疑念渦巻く表情で言葉を発した。 「な、何考えてんのよ、あの男は!?アタシ達に対して、殺す気で来てどうすんのよ!?」 「ど、どうする晴ちゃん!?」 「うん?この風の匂い・・・」 「こ、恐いです。ほ、本気で私達を殺す気・・・そ、そんなの嫌です!!」 “常盤台バカルテット”の面々は、他の常盤台生が見学している一角にまで避難した。 “バカルテット”の緊迫した雰囲気と、金束と鉄鞘が言葉に出した『殺す気』という言葉に、周囲の少女達も騒ぎ始める。 「こ、殺す気・・・!?う、嘘・・・!!」 「ま、まさか本当にそんな真似を!?」 「あの男なら有り得る・・・のか?こ、これは“講習”を止めた方が・・・。で、でもあの男が反発したら・・・私達にまで牙を向けてくるんじゃあ・・・!!」 お嬢様である少女達には無縁の言葉。その言葉が現実となる可能性は、今まで目の当たりにした碧髪の男の実力を考えれば決して低くは無かった。 「か、金束様!!な、得世様が本当にそんなことを仰ったんですか!?」 「さ、珊瑚!!ア、アイツ、アタシ達に『本気』を出すって言って来たのよ!!」 「『本気』!?な、得世様・・・!!どうして・・・!?」 「ね、ねぇ、銀鈴?界刺さんは、本当に『本気』を出すって言ったの?」 「一厘先輩・・・。正確には、少し『本気』を出すだけらしいんですけど、あの人の雰囲気が丸っきり変わって来て・・・」 「・・・!!あなた達に『閃光剣』を繰り出すくらいだもんね。遠目から見ていても、界刺さんの雰囲気が変わったのは感じたけど・・・苧環・・・」 「今形製の奴が界刺さんの所へ行ってるわ。とにもかくにも、それ待ちね」 「あの男・・・。私との勝負では『その気』すら失いかけていたのに・・・!!」 「フィーサ様・・・」 「で、でもあの人、私達が“講習”を辞退するのは許さないって言ってましたです。 “講習”から降りれるとしたら、私達があの人をボコボコにするか、あの人が私達をボコボコにするか、2つに1つだって・・・」 「ど、どうなっちゃうんだろう?遠藤には皆目見当が付きません!!」 「サニー先輩・・・。界刺様は・・・」 「鬼ヶ原さん・・・。あの人がそう言ったのなら、その2つのどちらかしか無いと思います。界刺様は・・・こういう時は絶対に容赦しないです!!」 “バカルテット”の会話に色んな少女が加わり、騒然となり始める。 ここで、1つ確認しておこう。この場に居る少女達は全員レベル3以上の能力者である。 もし、“講習”を中止するべきと判断し、反発するであろう界刺に対して彼女達が束になって挑めば、さしもの界刺でも“講習”を続行するのは困難である。 だが、そんな当たり前の選択肢が、今この時の少女達には存在しなかった。それだけ、界刺という男のインパクトが大きかったとも言えるが。 「く、くそ!!八方塞がりとはこのことね!!で、でもこのままだと・・・」 「元の作戦だと晴ちゃんとせっちゃんが前面で、私と月ちゃんが後方だったけど、あの人の『閃光剣』の威力を考えると晴ちゃんも前面に出るのは危険かも・・・」 「希雨!?そ、それだと世津の負担が・・・」 「せっちゃんの反射神経なら、『閃光剣』もかわせる筈。それに、せっちゃんなら『光学装飾』の大半は“効かない”し。月ちゃんもある意味においては。 でも、晴ちゃんや私は『光学装飾』をどうしても喰らってしまう。あの人の光に惑わされている間に『閃光剣』を喰らったら、それこそマズイわ!!」 「で、でも・・・!!それじゃあ、アタシがアイツに勝負を挑む意味が・・・!!」 「そんなのは、どうでもいいの!!!」 「!!!」 「ぎ、銀鈴さん・・・!?」 銀鈴の大声に金束と鉄鞘は驚愕する。こんな銀鈴は、今まで一度たりとも見たことが無い。 「このままだと、晴ちゃんが大怪我を負っちゃう可能性が高い!!そんな、そんなこと許せるわけ無い!!私は晴ちゃんのためを思って・・・!!」 「それは、違う!!希雨!!アンタは、間違ってる!!アンタは、アタシを思うばかりに世津に危険を押し付けてるだけよ!!」 「ち、違う!!こ、これはちゃんと考えて出した作戦なの!!わ、私はせっちゃんのことも・・・!!」 「だったら、アタシも世津と一緒に前面に出る。世津1人に、危険を押し付けるわけにはいかない!!」 「だ、駄目!!それだけは、駄目!!お、お願いだから・・・!!晴ちゃん・・・私の言うことを聞いて・・・!!」 「そんなお願い、聞けるわけないじゃん!!アイツの目的はアタシなのよ!?そのアタシが前面に出ないってことは、アタシは戦わずにアイツに屈したことになるのよ!?」 「・・・それでいいじゃない」 「・・・希雨?」 金束は、己が親友の言葉に耳を疑う。その親友は、何時しか涙を目に浮かべながら己が親友に問い掛ける。 「晴ちゃん、何時も言っているじゃない。自分は“負け犬”だって。“負け犬”って・・・そういうことでしょ?自分より実力が高い人には、最初から挑まない。 最初から自分の負けを認める。“自分自身”の敗北を。あの人は・・・強い。私達からすれば、あの人は強過ぎる。 そんな人が・・・私達を殺す気で来る。絶対に勝てっこない。も、もしかしたら、今から皆で謝ればあの人だって許してくれるかもしれない。そ、そうだ。その手があった」 「希雨・・・!!アンタはそれでいいの!?幾らアイツがアタシ達より強いからって、最初から何もかも諦めるって言うの!?」 「晴ちゃんが無事なら、私はそれでかまわない!!!」 「銀鈴さん・・・!!・・・・・・」 銀鈴にとって、最優先すべきは金束の身の安全。それは、金束と友達になってからずっと変わらない銀鈴の優先順位。 引き篭もりで友達も居なかった自分を引っ張ってくれた、自分に色んな景色を見せてくれた金束のためなら、銀鈴は何でもする。金束の意思に反してでも。 パアァッン!! 「・・・銀鈴さんは間違っていますです」 「月代・・・!!」 「月ちゃん・・・!!」 そんな視野狭窄に陥っている友を目覚めさせるために、鉄鞘は銀鈴の頬を引っ叩く。 「友達って、そんな程度なんですか?私が今まで付き合って来た友達は、友達の意思を踏み躙ったりするような人間なんですか!?」 眼鏡の奥に見える瞳は、涙色に彩られながらも確かな強さを持ち合わせていた。 「友達が楽しんでいるなら、自分も楽しくなるです。友達が困っているなら、自分が助けるです。その逆もです。 でも、友達が抱く譲れない思いを踏み躙るのは間違っているです。金束さん、銀鈴さん、銅街さん、そして私は共に歩いて来た仲間じゃないですか。 これからも・・・これからも一緒に歩いて行きたいです。かけがえの無い友達として・・・皆さんと共に!!」 金束とルームメイトになって以来、鉄鞘の学生生活は一変した。友達が起こす色んな騒動に巻き込まれた。時には怒り、時には泣き、時には笑い合った。 鉄鞘月代にとって、金束達と過ごす時間は何時しかかけがえの無いものとなっていた。だから、彼女は言う。 これからも、一緒に頑張ろうと。共に居ようと。どんな困難が立ちはだかっても、皆で協力して乗り越えようと。 「(アタシは・・・アタシは・・・)」 銀鈴と鉄鞘、2人の友達の言葉を受け金束は考える。自分が今何をするべきなのかを。 『君は“負け犬”なのかい?“レベルが上がる”なんて誘い文句に身を委ねた連中のように?』 “負け犬”。あの男の言葉が、鋭い痛みを放つ。今まで受け入れて来たその有り様が、何故か今の金束には異物のように感じられる。 「(アタシは・・・“負け犬”なのか?アイツが言う、甘い言葉に誘われて努力を怠るような人間なのか・・・?アタシが・・・?・・・・・・違う)」 例えレベルが上がらずとも、能力が上がるように研鑽を積んで来た。“負け犬”の有り様を受け入れた後も、それなりの努力はして来た(勉学面は・・・だが)。 結果は伴っていない。伴わなければ、意味等無いのかもしれない。でも・・・ 「(もしアタシが“負け犬”なら、希雨の言う通りアイツに土下座してでも謝る選択肢だって考える筈。でも、アタシはそんなことを考えもしなかった)」 胸の内から湧き上がって来る感情。それは・・・対抗心という名の熱き感情。 「(・・・負けたくないんだ。アタシは、アイツに負けたくないんだ!!何でかはわかんないけど、アタシは界刺得世に負けたくないんだ!!!)」 それは、自分が理想とする姿に対しての憧憬に端を発する対抗心であることに金束は気付かない。 “負け犬”になる前の・・・未来に対して光り輝く可能性を期待していた頃の自分が、今の金束晴天の心を強く後押しする。 「・・・希雨。月代。アタシは、アイツに挑むのを止めない。アタシは・・・アイツに負けたくない!!絶対に!!!」 「晴ちゃん・・・」 「金束さん・・・」 一度心に強く決めたのなら、その通りに動く。それが、“常盤台バカルテット”を引っ張る少女、金束晴天の在り方。 「無謀なのはわかってる!!もしかしたら、希雨の言う通り酷い目に合うかもしれない。 でも・・・それでもアタシはアイツに背を向けたくない!!アイツから逃げたくない!!アイツに屈した・・・“負け犬”になりたくない!!! だから・・・皆の力をアタシに貸して頂戴!!アタシは・・・界刺得世に絶対に勝つ!!!」 晴天の名の如く、金束の瞳は爛々と光り輝いていた。その瞳に秘められたるは、『自分の在り方』。絶対に屈さないという鋼の意志。 「・・・わかったよ、晴ちゃん。ハァ・・・一度本気で決めたら私の制止も聞かないんだから・・・」 「希雨・・・」 「でも・・・晴ちゃんらしいかな。ごめんね、1人で泣き喚いちゃって。月ちゃんに引っ叩かれて目が覚めたよ」 「あ、そ、その・・・こ、これはつい手が出ちゃったというか・・・。つ、つつ、つまり・・・ごめんなさいです!!!」 「ううん。ありがとう、月ちゃん。2人のおかげで、私は私の大事な友達を踏み躙らなくて済んだんだもの」 「銀鈴さん・・・」 金束、銀鈴、鉄鞘は互いに笑みを浮かべる。下手をすれば、友達関係が壊れかねなかった今回の衝突を、少女達は見事乗り切った。 「さぁて、後はアイツに勝つだけね!!・・・・・・どうしようっか?」 「・・・・・・本当に晴ちゃんは晴ちゃんだね。計画性が全然無いっていうか・・・」 「そろそろあの人も痺れを切らすかもしれませんです。な、何とかいい案を・・・」 「あらあら、でしたらわたくしがその材料程度は提供させて頂きますわよ?」 「津久井浜先輩!?」 如何にして界刺に打ち勝つか。再び悩み始めた3人に、午前の“講習”にて界刺に敗れた津久井浜が声を掛ける。隣には、菜水も居る。 「津久井浜さんってば、ずっとあの人の戦闘を観察していましたからね。余程負けたのが悔しい・・・」 「あらあら、菜水さん?『発熱爆弾』・・・味わってみますか?菜水さんの肥えた舌に見合うだけの味を備えていると思いますよ?」 「い、いえ!!結構です!!」 思わぬ被害を被りそうになった菜水は、ブンブンと首を振る。 「貴方達は、どういう作戦を立てていますの?」 「え、えっと・・・希雨!」 「・・・ハァ。・・・既に立てていた作戦だと、晴ちゃんとせっちゃんが前面、私と月ちゃんが後方という形ですね」 「何故その戦法に?」 「晴ちゃんは『肉体強化』による白兵戦が得意ですし、せっちゃんは身体能力自体が超人的です。 特にせっちゃんの場合は、『精密処理』によって五感が非常に冴えている関係から、“聴力だけ”であの人の居場所を特定できると踏みました」 銅街の能力『精密処理』は、脳の情報処理能力を飛躍的に向上させる能力で、これによる五感の鋭さは人並みはずれていた。 今回の場合で言えば、目を瞑りながらも戦闘可能という点が重要な要素であった。界刺の『光学装飾』の大半は、目を瞑っている人間には効かない。 銅街の場合は超人的な身体能力も持ち合わせていることから、強力な対界刺得世対策になり得るのだ。 「後方メンバーの選出理由は?」 「月ちゃんは、『絶対嗅覚』であの人の居場所を匂いで特定できます。晴ちゃんや私が『光学装飾』で惑わされても、月ちゃんなら確実に居場所を特定できます。 もし、せっちゃんが戦闘不能になっても、あの人の正確な位置を探れる月ちゃんは後方に。私は、月ちゃんの護衛ですね。いざという時は、私も前面に出るつもりでした」 鉄鞘の能力『絶対嗅覚』は、犬並みの嗅覚を発揮できる能力で、銅街以外に『光学装飾』下に居る界刺の正確な居場所を特定できる人間である。 その正確さだけなら、おそらく銅街以上。但し、戦闘能力はからっきしなので後方に。 銀鈴は、自分の居場所を特定し得る鉄鞘を潰そうと攻撃を仕掛けて来るであろう界刺から鉄鞘を守るために後方に身を置く。そういう段取りであった。 「あらあら、それ程までに綿密な作戦を・・・。これでは、わたくしがアドバイスする余地が無いも同然ではありませんか」 「・・・でも、あの人の『閃光剣』の威力を考えると無闇に白兵戦を仕掛けるのは危険です。何とか、あの人の動きを封じる作戦を考えないと・・・」 「そがなことなら、アタイにいい案があるったい!!」 「せ、せっちゃん!?それ、ホント!?」 「世津・・・。そういえば、アンタ今の今までアタシ達のやり取りに参加していなかったけど、何をしていたの?」 津久井浜と銀鈴が会話をしている途中に、今まで作戦タイムに参加していなかった銅街が割り込んで来る。 彼女は、しきりに空へ視線を彷徨わせていた。雲は急速に黒みを増し、風も生暖かくなっていた。 「もうすぐ、雨が来るとよ」 「えっ!?」 「あっ・・・雨」 そこに、降って来たのは雨。ポツンポツンと、しかし確かに降り出した雨が少しずつ強くなって来る。 「そういえば、今日は午後から少しだけ雨が降るって予報・・・いえ、予言でしたわね」 「そうでしたね・・・。これは、“講習”の方もどうなるんでしょうね?」 津久井浜と菜水が、降って来た雨に関する感想を言い合う。その脇で、銀鈴は銅街の発言の真意を理解する。 「そうか・・・。これなら・・・。せっちゃん、ナイス!」 「こんで、ちーとはアタイや晴天の負担ば軽うなるやろ?」 「せっちゃん・・・」 銅街の労わりが、銀鈴の心に染み渡る。銅街自身、先程の銀鈴の取り乱しようを見て、何とかあの男に勝つ方法が無いか、 その可能性を上げる材料が無いかを必死に考えていた。 その時に思い付いたのが、作戦タイムに入る前に匂った雨の匂い。 銅街は、その鋭敏な感覚と田舎暮らしという経験から、短時間における天気の変化を言い当てることができた。 「うん・・・!!これなら、何とかできるかも!少なくとも、あの人の動きを少しでも封じられる可能性は高い!! 晴ちゃん!せっちゃん!月ちゃん!こっちに来て!!あのね・・・(ゴニョゴニョ)」 「(ゴニョゴニョ)。・・・さすがは、アタシの親友!!これなら、アイツにも勝てる・・・かも」 「(ゴニョゴニョ)。・・・さすがったいね、希雨」 「(ゴニョゴニョ)。銀鈴さん・・・すごいです!!それと、金束さん。『かも』じゃ無くて、絶対に勝ちましょうです!!」 「そ、そうね!!ここまで来て弱気になったていたら話にならないわ!!希雨!世津!月代! アタシ達“常盤台バカルテット”の底力をあの男に見せ付けてやるわよ!!そんでもって、絶対に勝つ!!!いいわね!!?」 「「「おおううぅ!!!」」」 「津久井浜さん・・・。何だか無駄骨でしたね」 「あらあら、そんなことは無いわ。だって、こんな眩しい笑顔を見ることができたんだもの。それだけで、私は満足よ」 「えぇ、そうですね。(自分が何の役にも立たなかったことの言い訳じゃないかしら?)」 「・・・菜水さん?何か、とても不愉快なことを考えておられませんか?」 「い、いえ!!」 “常盤台バカルテット”の威勢に当てられ、周囲の常盤台生にも元気が戻って来る。 この娘達なら何とかしてしまうんじゃないか。そんな希望を思わず抱いてしまう程、彼女達の笑顔は眩しかった。 ピカッ!! 「「「「!!??」」」」 空に光球が浮かぶ。それは、作戦タイムの終了を告げる合図であった。碧髪の男―界刺得世―は雨脚が強まり始める中、雨避けに使っていた木から姿を現した。 「ゴクッ・・・!!時間切れ・・・ね。そんじゃ、行くわよ!!」 「うん!!」 「おう!!」 「はいです!!」 対する“常盤台バカルテット”の面々も雨降る中に身を投じる。いよいよ、最後の“講習”が始まる。 「形製!!界刺さんは何て言っていたの!?」 「形製さん・・・!?」 同時に、界刺の下へ向かった形製が戻って来た。苧環や一厘が駆け寄る中、形製は濡れた髪や制服に気を留めずに“講習”のステージに視線を送る。 「・・・君達もよく見ておくといい。今から・・・界刺の『本気』の断片を目の当たりにできるよ」 「『本気』・・・!!」 「界刺さん・・・・!!」 苧環や一厘が、形製の言葉を受けて視線を界刺に送る。一方、形製は先程の会話を思い出す。 『あいつに染み付いた“負け犬根性”ってのは、ちっとやそっとのことで拭えるようなモンじゃ無ぇ』 『だからって、何も「本気」を出すようなことじゃあ・・・!!』 『俺があいつに関われるのは今日この時だけだ!そんな短い時間の中であいつの“負け犬根性”を叩き潰すためには、 こっちも「本気」の断片くらいは出さなきゃなんねぇ』 『そんなに“負け犬根性”というのが嫌いなのか、君は!!』 『・・・あいつは“負け犬”なんかじゃ無ぇよ。あいつは、“自分自身”に“負け犬”を押し付けてるだけだ。それが・・・気に食わねぇ・・・!!』 『えっ・・・』 『だからこそ、今この時にあいつの“負け犬根性”を叩き潰す!! もし、あいつが本当に“負け犬”なら、それ相応の無様さを披露するさ。それに、“負け犬”じゃ無かったとしても面倒臭いことには変わりねぇ。 これは、それを見極めるための“講習”でもあるんだ。そのために必要なのが・・・「本気」の断片。そういう判断なんだよ』 『・・・“らしくない”ね、今日の界刺は。普段の界刺は、そんなに積極的じゃ無いよ。 無気力でぐーたらで面倒臭がりで。自分に関係無いのなら、とことん関わらないのに』 『・・・俺も何時まで生きられるかわかんねぇしな。あの殺人鬼に目を付けられた以上』 『!!?』 『それに、あの殺人鬼と対峙した時は「本気」で臨む以上、俺も「本気」の出し方を復習しておかないとな。 久しく俺も「本気」を出していないし、ここら辺で慣らし運転をしとかねぇと。まぁ、俺なりの事情もあるんだよ、形製』 『界刺・・・。い、嫌だからね。君が死ぬなんてこと・・・あたしは絶対に認めないからね!!』 『形製・・・』 『あたしは・・・あたしは・・・君が居ない世界なんか、絶対に認めないから!!』 『ふぅ・・・。お前も面倒臭い男に惚れちまったな(ポン)』 『!!?』 『(ポンポン)。まぁ、少なくとも自分から死ぬつもりは無ぇよ。それだけは、約束する。俺の命に懸けて。 んふっ、この台詞は涙簾ちゃんにしか言ったことが無かったな。どうだ、形製。少しはカッコ良くキメれたんじゃない?』 『・・・バカ。それに、気付いていたんなら気付いてたって言ってよ。1人で騒いでいた自分が馬鹿みたいじゃないか。・・・そうだよ、あたしは君が好きなんだ』 『・・・』 『あたしは、君が好きだ。世界中の誰よりも。あたしは、君と共に居たい。君の居ない世界なんて嫌だ。 だから・・・約束して。絶対に死なないって!相手が殺人鬼だろうが何だろうが、絶対に死なないって!!』 『・・・そりゃ、無理だろう。人間何時死ぬかわかったもんじゃ・・・(ムニュ)。・・・!!!』 『(ムニュ)。・・・勝手に約束させて貰ったから。あたしは、君と共にこの世界を歩く。界刺は、約束を守るんでしょ? だったら、この形製流麗の口付け(やくそく)も守ってみせて!!君と共に歩くという、あたしにとって命と同じくらい重い口付けを!!!』 『・・・・・・ハァ。善処はするよ。何せ、お前のファーストキスだし。ちなみに、俺にとってもファーストキスだったがな。まさか、お前に奪われるとは・・・!!』 『な、何だよ!!何か、文句でもあるって言うの!?』 『大アリだ。まぁ、それ程ショックじゃ無いけどな。お前にキスされても、“そっち系”の感情が全然波立たないからな。 んふっ、これなら他の女とキスしても全然大丈夫そうだ』 『なっ・・・!!!』 『華憐にはさっき告白されたし、リンリンや珊瑚ちゃん、嬌看や桜は俺のことが好きみたいだし。いや~、モテる男は辛いね』 『なっ・・・なっ・・・!!!』 『この際、色んな女の唇を味わってみるっていうのもいいかもな。女性不信状態っていうのも、案外悪くないかも。女は強く出れないし、俺も罪悪感を全く感じないし』 『か、界刺~!!!』 『んふっ。ということで今後の楽しみも増えたからさ、それを堪能し切るまでは死んでも死に切れねぇよ。・・・これでいいか、形製?』 『・・・!!!・・・もう。本当に卑怯だよ。バカ界刺のバカバカバカ』 『痛いな~。全くこれだから、バカ形製は・・・。んふっ!』 『・・・フフフ。・・・わかった。君の好きなように戦えばいいよ。あたしは、君を心の底から信頼しているから』 『・・・ありがとな。それと・・・心配掛けて済まねぇ。きっと、これからも掛けると思うけど』 『・・・いいよ。君が生きてくれるなら、あたしはそれだけで十分だ。 君があたしを恋人(パートナー)として選んでくれるなら、もっと嬉しいけど。だから・・・生きてよ?』 『なるたけ頑張る』 形製の視線の先には、“講習”を開始した界刺の姿が映っている。その姿を見て、自然と己が指を唇に乗せる。 自身のファーストキスを贈った男の姿を確と瞼に焼き付けるように、少女は“講習”に集中する。 「(あたしも、もっと強くならなくちゃ!!どんな脅威からも界刺を守れるくらいに!!)」 少女は決意する。愛する人を守れるだけの能力を、己が実力を高めるための、それは決して解けない誓い。 continue!!
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